サイト公開に当たってのご挨拶

世界各地の地域通貨

こんにちは,西部忠です。地域通貨の新サイトLocal Currency Community(LCC)を公開します。
これを公開するにあたって一言述べさせてください。

いま,地域通貨ブームはだいぶ沈静化したようです。
世間で言われているように景気が上向いただけでなく,少しやってみたけど思ったほどうまく行かないじゃないかという失望感もあるのかもしれませんが,これは物事の自然な流れなので,気にする必要はありません。
むしろやっと落ち着いて本格的に取り組める状況になってきたと言ってもいいでしょう。
実際,ブームに乗っかって軽いノリでやってみるという地域通貨はかなり減って,これまでの経験からいろいろ学んだうえで,仕組みや運営方法にもいろいろな工夫を凝らした,深く練られたものが増えてきたのではないでしょうか。

そもそも地域通貨というのは便利なツールでも,魔法のような力でもありません。
「便利なツール」というのは,それを使う側が何の苦労も努力もなく,それを使いさえすれば生活が便利になったり,物事がこれまでよりスムーズに進んだりするという意味で,いわばケータイとかクルマなような文明の利器を指す言葉です。
他方で,「魔法のようなパワー」というのは,それを持ってさえいれば,その人がどんな人であろうとも威力を発揮して他人を動かせるというような意味です。
円やドル等のお金がまさにそういう力を持っています。
しかし,地域通貨というのはそのどちらでもありません。
だから,私は地域通貨をそれらと区別するために「コミュ・メディア」と呼んできました。
簡単に言えば,それは「コミュニティ」と「コミュニケーション」のためのメディアということです。
そして,地域通貨は,決して派手さはないものの,山積するグローバルな諸問題にたいする一つの考え抜かれた答えであり,しかも,ローカルな現場で実践できる,そうしなければ意味がない答えであるという点で,まさに'Think Globally, Act Locally'というスローガンが当てはまる運動なのです。

しかし,いま言っておきたいのは地域通貨のそういった理念の部分についてではなく,地域通貨に関わる人々の気持ちについてです。

地域通貨はいますぐ役立ち,生活がみるみる豊かになるようなものでは,少なくとも当面は,ありません。
そういっておいた方が誤解がないから,そういうわけです。
しかし,それを使っているうちに,ほんの少し自分が変わってしまう,変われるかもしれないことに気づくというような,微妙な違いを生み出してくれるものです。
今自分が信じて疑わずに当然だと思っている自分の価値観や考え方というもの,例えば,自分にとって何が大事か,自分は何が欲しいのかといった「自分」の根本を形作っているともの,それらがもしかしたら全く自分のものではなく,人からの借り物に過ぎないのかもしれないとか,単にこの社会で押し付けられてきたものなんじゃないかとか,もしかしたら,単に他の人もそうしているから自分もそうしてきたものかもしれないなどということに気づかせてくれるような何かです。
これまで気づかなかった自己や社会の<可能性>に気づかせてくれる,気づくことで自分や回りが<現実に>ほんの少し変わる,すると,さらにほんの少しだけその先が見えてくるとでもいうようなもの。
地域通貨をそういう気づきと自己変容のためのメディアと考えた方が,もう少し無理なくその意味が理解してもらえるのではないでしょうか。
だとすれば,それがそうそう便利なツールであるはずもないなというように。

国家通貨に比べて弱く柔らかなものである地域通貨の場合,どんなに細々とでも続けて行くことが大事です。
何よりも「継続は力なり」あって,いずれ潮は満ち,大きな流れがうねり始めるでしょう。
地域通貨に少しでも興味を持ち関わった人が少しの経験から地域通貨を否定的に判断して,以前と少しも変わらない自分や生活に戻ってしまわないことを願います。
そして,このサイトが,地域通貨の継続という力に,そして,世界中の地域通貨の連携の輪に,少しでも資することを期待します。

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