地域通貨の発行方式

【地域通貨の発行方式】

<紙幣方式>

「紙幣方式」とは,発行委員会が独自のデザインやメッセージを印刷した紙幣を発行し,それが人々の取引を通じて転々と流通していくタイプの地域通貨である(西部[2002]p36)。

 

<口座方式(記帳方式)>

「口座方式」とは,紙幣を発行せず,参加者が残高ゼロから出発する口座をもち,モノやサービスを提供した(売った)ときに黒字(プラス),提供してもらった(買った)ときに赤字(マイナス)を記帳していくことによって取引を多角的に決済していく方式である(西部[2002]p38)。

 

<手形方式(債務証書方式)>

「手形方式」とは,モノやサービスの提供を受けた個人が自ら新たに手形(債務証書)を振り出すか,第三者から受け取った債務証書に裏書きして使うかのいずれかによって,取引を行う方式である(西部[2002]p41)。

 

地域通貨発行方式の違いによる長所と短所


長所 短所
紙幣方式

・簡便で匿名的
・現行通貨に似た使用感覚
・シンボリックなアピール機能あり
・不特定多数に広がりやすい


・発行権限の集中
・発行団体による信用創造の可能性
・発行ルールの整備,発行量管理が必要
・流通経路,取引集計が困難
・流通範囲の限定が困難
・偽造の可能性あり
・法的問題が生じる恐れあり

口座方式
・各個人が交換時に通貨を発行
・信用創造なし
・赤字が持てる
・会員制なのでコミュニティ構築が容易
・流通経路が特定可能,不正防止になる
・流通範囲を限定できる
・赤字限度が設定可能
・電子マネーによる短所の克服が可能

・記帳に手間がかかる
・運営や管理が必要
・モラルハザードが生じる可能性あり

手形方式
・各個人が交換時に通貨発行
・信用創造なし
・赤字が持てる
・遠方の相手とも取引可能
・通常取引時には簡便
・シンボリックなアピール機能あり
・不特定多数に広がりやすい


・発行に手間がかかる
・流通経路,取引集計が困難
・流通範囲の限定が困難
・偽造の可能性あり
・管理や監視は困難
・赤字限度が設定不可能
・モラルハザードが生じる可能性大

(出典:西部[2002]p43, 表1)

【参考文献】

西部忠[2001]『豊かなコミュニティづくりを目指す地域通貨の可能性—地域社会の創造的な活性化を求めて—』北海道自治政策研修センター。

西部忠[2002]『地域通貨を知ろう』岩波ブックレット。

西部忠[2004]『地域通貨のすすめ』北海道商工会連合会。