地域通貨の定義と目的

【定義】

地域通貨は,日銀券や硬貨とは異なる目的や特性であり,「お金であってお金でない」ものである。また,それは日銀券や硬貨ではカバーできない機能を保有しており,お金そのものを示すこともあれば,仕組みを指す場合もある。より専門的な言葉で言い換えるならば,地域通貨は「経済と社会・文化の複合メディア」である(西部[2004]p4)。

<地域通貨の経済的側面>

地域通貨は,自立循環型経済と自由民主的社会を構築するために,人々が自主的に設計・運営する,特定の地域・コミュニティ内でのみ流通する,利子がつかない,経済メディアである(西部[2004]p3)。

<地域通貨の社会・文化的側面>

地域通貨は,協同的コミュニティを形成にするために,人々をつなぎ合わせ,互酬的・互助的関係を形成し,共通の価値や関心を表現・伝達・共有するための社会・文化メディアである(西部[2004]p4)。

 

【目的】

地域通貨の目的を整理すると,経済的な目的(①〜③)とコミュニティに関連した目的(④〜⑥)とに分けられる(西部[2002]p16)。

①信頼を基盤として互酬的交換をめざす。

②地域通貨の域内循環により地域経済の自律的な成長を確立し,インフレや失業の問題を解決する。

③ゼロないし負の利子により,信用創造,投機,独占的な資本蓄積を阻止し,財やサービスの取引を活発化する。

④個人の福祉・介護,救援などの非市場的サービスを多様な観点から評価する仕組みを提供し,それらを活発にする。

⑤労働,消費,福祉,環境に関わる,さまざまな非政府組織(NGO)や非営利組織(NPO)の活動を互いに結びつけるための理念や枠組みを提示する。

⑥人々にただ安心感や一体感を与えるのではなく,人々の間に協同や信頼の関係を築き,貨幣交換へと一元化しているコミュニケーションを多様で豊かなものにする。

 

【参考文献】

西部忠[2002]『地域通貨を知ろう』岩波ブックレット。

西部忠[2004]『地域通貨のすすめ』北海道商工会連合会。